新聞、チラシ包装紙といったごく身近な素材で作る切り紙。今回はその魅力を、グラフィック工芸家の井上由季子さんにお伺いしました。切り紙を使ったお礼状やカードづくりで創作の楽しさと、お相手とのコミュニケーションを体験してください。
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今回の講師 |
京都・二条城近くに、物づくりを試みるモーネ工房と、大人も子供も一緒に手を動かし物作りを楽しむ寺子屋学校、ギャラリーの3つを、1つの場所から発信。著書に『老いのくらしを変えるたのしい切り紙』(筑摩書房)、『住み直す』(文藝春秋)などがある。 http://www.maane-moon.com/ |
新聞はよく観察すると、たくさんの色が紙面に使われています。色ごとに分けて保存しておくと便利です。
今回お伝えする切り紙は、お子さんからご高齢の方まで世代を超えて楽しめる創作です。井上さんは、80代のお父さま、お義母さまにも取り組んでもらわれたそうです。切り紙をするのにあえて紙を買う必要はありません。新聞、チラシや包装紙などが材料ですが、切り取ることによって何気ない紙が新しい表情に生まれ変わります。そこに“気づく楽しみ”が切り紙の醍醐味なのです。上手につくろうと思う必要はありません。感謝の気持ちを込め、それでカードをつくれば、送られた方との素晴らしい交流の記録となるでしょう。
切り紙でつくるカードは、電子メールなどにはない温もりがあります。新聞のカラー広告などから、モチーフに合った色を探して手作業で紙を切る。その一手間が感謝の気持ちを相手に伝えます。クリスマスカードなど季節のカードも、素敵に仕上げることができます。
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建物のシャープな線が多く載った不動産のチラシは、絵を引き締める効果が。
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ビルの窓枠を手ごろなサイズに切り、2つ折りしてクリスマスツリーを縦半分にした形にカット。
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木の幹として濃い色の紙を貼り、文字を添えます。
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イチジクの皿の部分には、新聞の株価ページを使用。文字が小さく詰まった株価ページは模様として活用。新聞のふちの部分の余白もデザインに生かせます。
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季節感のあるイチジクを絵柄にしたカード。赤紫色の新聞紙のカラー広告ページをイチジク型に切り取り、ザラッとした温かみのある質感に。
贈り物をいただいた際、お礼状を送るなら、その包装紙を利用するのもいいでしょう。この時「何か1つを形にする」ことがポイント。たとえばワインをいただいたら、瓶の形に包装紙を切り抜いてみるなどの一工夫です。長いお礼の言葉がなくても相手に通じる、温かなお礼状になるでしょう。
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たとえばお菓子をいただいた場合、包装紙、ひも、シール…これらすべてが素材候補になります。
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今回は包装紙の薄いピンクの部分を使い、栗の形にカット。
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包装していた赤いひもも活用。カードのアクセントになります。
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包装紙でつくったお礼状の完成。栗の下部には包装紙の住所が記された部分を使うことで模様のような雰囲気を加味。菓子の小袋に貼ってあった金色のシールなどもワンポイントとして使えます。
切り紙は、ノートにまとめて貼るのも楽しいです。その際、大切なのは、切り絵のテーマを、「魚」「くつ下」など、自分の好きなもの1つに絞ること。そうすることで、絵柄を切り取る色の見方やセンスも自分らしさが表れます。また、ノートを見返すことで自分の上達ぶりや心の記憶を振り返ることもできます。几帳面な人、大胆な人、切り紙に表れる自分の個性を楽しんでください。そんなノートにためた切り紙のモチーフを年賀状やカードに使うことで、人に見ていただくきっかけにも。新しいコミュニケーションが生まれます。
ノートにまとめた切り紙集。これは深海魚をテーマに図鑑を参考に切り取った井上さんのお父さまの作品。
井上さんがお父さまに依頼した富士山モチーフの年賀状。
【ご注意】この情報は2013年10月現在のものです。